つれづれと

雑食おたくが綴る感想やら独り言やら写真やら。

【感想】VIVID CONTACT -The just-

VIVID CONTACT -The just-
2015/1/7~11 中野THE ポケット
出演:◆井深克彦◆太田基裕◆柏進◆梶原雄太キングコング)◆加藤良輔◆四大海(劇団S.W.A.T!)◆曽世海司Studio Life)◆森屋正太郎(劇団S.W.A.T!)◆米原幸佑(RUN & GUN)

 

だいぶ前のことになってしまうのですが書きたかったので書きます!いわゆる「ビビコン」の感想です!!!

元々この「ビビコン」、2014年に上演された二人芝居と同じシリーズということでしたが、そちらを見ていなくても楽しめる構造になっていました。でも、きっと見ていたらもっと楽しめたんだろうなあと思うので、DVD購入を検討しております。もっともっとあの世界に浸りたいです。以前の記事「中野喫茶室」の感想でもつらつら語ったのですが、わたしはほんとうにこの脚本演出の柏さんのつくりだす世界がだいすきなので、今回も心の底から楽しめました。それでは以下ネタバレなど含めた感想です!


舞台は東京のとあるホテル。そこに集まる人々の日常のお話でした。
たとえばホテルのベルボーイ、たとえばお客さん、たとえば旅行代理店の店員さん。またこれも中野喫茶室とおんなじで、あらすじを言うのがとんでもなくむつかしいのでぼんやりと書いていこうと思います。

ホテルでのとある一日を描いたこの舞台は、いわゆるワンシチュエーションもので、ホテルのロビーから一切場面が切り替わらない構成でした。ロビーなのでベルボーイさんはずっとそこにいるわけで、けっこう出ずっぱりだったなあと思います。そこに入れ替わり立ち代わりやってくるのがお客さんたち。

まず初めに来たのが観光客にツアーを案内するお仕事をしている吉岡さん。吉岡さんはどうやら毎日このホテルにやってきているようで、そこで毎日いろいろなお客様にツアーの案内などをしているみたいでした。ベルボーイさんともなんとなく知り合いだったようですし。吉岡さんはニコニコ笑顔の仕事ができる女!ってかんじで、関西から来たやかましいお客様、はあちゃんまあちゃんに押されつつも懸命に接客をしたりと序盤は好調な出だしでした。しかし中盤に「アンタの笑顔はうそ笑顔だ」とはあちゃんやまあちゃんに言われ、実は彼氏さんのことで悩んでいたりなどと人間らしい部分が垣間見え、最終的にははあちゃんまあちゃんと飲み明かしてべろんべろんに酔っぱらっちゃって本音を語りだしたりしちゃう、とってもかわいらしい女性でした。へべれけになってからのよしさんがほんとにかわいくてかわいくてしあわせになってほしいです。なれるね!きっとよしさんならなれるね!
よしさんはもちろん素敵だったんですが関西組のはあちゃんまあちゃんの破壊力がすごくて…キャラクターも濃かったし、アドリブもがんがんぶちこんできていて、あの世界と空気とテンポを作るのに必要不可欠なキャラになっていました。日替わりシーン、最初なかったのにこのひとたちのせいで増えた。ほんとにすさまじかったです。やかましいおばちゃん感もすごく伝わってきました。

それからホテルに泊まっているマリカちゃん。彼女はちょっと不思議というか、ちょっと変わってると言うか、すごい、なんと形容すべきかむつかしいんですが、でもすごい愛くるしくて、わたしはマリカちゃんがほんっとにだいすきなんですが、そのマリカちゃんは、ホテルの近くで働いていて、仕事の休憩にホテルのロビーを使っている陽子、という女性と出会い、いろいろあったりなかったりで、ふたりは一緒に住むことになります。ほんとうになにが起きたのか見ているわたしたちも怒涛過ぎて「!?」ってなったしたぶん本人たちもいつのまにか一緒に住むことになって「!?」ってなったとおもいます。でも、マリカちゃんと陽子さんなら一緒に暮らすのもきっとアリだなって思えちゃうようなコンビで、すとんとハマった組み合わせでした。
じつは2014年に上演された二人芝居というのはこのマリカと陽子が一緒に暮らしているというストーリーだったそうで、今回はそれに繋がるエピソード0だったということで。やっぱりそうなると前作も俄然見たくなります…ほんとにこのふたりの関係性がかわいかった…。

そしてお客さんはもう一組。役者さんとその彼女さん(実は不倫相手)のカップルでした。とにかくこの役者さんがどうしようもないやつで、勝手な自説なんですけど自身が役者さんでもある柏さんの書く「役者」ってどこかダメな部分があったりするキャラクターが多い気がするんですが今回の役者さんもだめだめで、自分の都合のいいように彼女さんを利用して、なにか言われても「でも俺のほうが大変だし」「いや愛してるからさ、愛だからさ」で片づけてしまおうとする男でした。で、そんな役者さんに最初は健気に接している彼女さんも、うっかりはあちゃんまあちゃんの「ダメな男はこういうやつ」という話を聞いてしまい、そこで目が覚めて最後は立派にお別れを告げて清々しい顔でホテルを後にします。めでたしめでたしってかんじです。

最後にもう一組!ホテルで働くベルボーイ組です。個人的に、この組がいちばんお気に入りでした。ベルボーイはふたり。どちらかがいたり、どちらもいるときはこそこそお話をしてたり、客の様子をうかがってたり。ちまちま隅っこでなにかしていることが多かったので目が離せなかったです。片方のベルボーイさんはちょっとネガティブで「前の仕事の方がよかったのかもなあ~」とか「学生時代ってたのしかったよね~」とか言ってしまうようなお人で、もうひとりのベルボーイさんはコンシェルジュを目指して勉強をしているひとで、ちょっと冷たかったりぶっきらぼうな物言いなところもありつつ、真面目に上を目指しているお人で、とにかくこのふたりがすごくすごいいい関係性でした。お互いがお互いにいい距離感で、でも同僚としてわかりあってるところとか、互いに背中を押しあってあげてるところとか、すごいよかったです。すごく…。上手く表現できずによかったとしか言えないんですけどすんごいよかったです!よかった!もっと彼らのお話を見てみたいです。


という、個性あふれるみなさんで展開したお話だったのですが、主役は彼らだけではなく、ホテルのロビーに飾ってある一枚の絵も大きな役割を果たしていました。ビビコンのサイトやフライヤーにも使われていたこの絵を見て、登場人物たちはいろいろな気持ちになります。あのころはよかったなあ、とか、学生時代は楽しかったなあ、とか、ちょっとノスタルジックなきもちになったり、でも楽しかった過去を乗り越えていまを生きていくひとなのかもね、と言う人もいたり。サイトに行くとたぶんその絵を見られるはずなのでぜひ見てみてください。
見る人たちにいろんな感情を与えたその絵はたしかにこの作品の中心にあって、最初からずっと大きくどーんと飾られているその絵の存在感はとても大きかったです。舞台を見る前と、見たあとだと、わたしたち観客もその絵に対する気持ちが変わっていたりとか。背景とかは一切なくてその絵だけが飾られている空間でしたが、とても美しい世界でした。


わたしは柏さんの作る、日常のすぐそばにあるような、リアリティがあって、でも決して現実ではなくて、けれども芝居ぽくもなくて、という空間がほんとうにだいすきなのですが、今回その空間づくりに一役買っていたのが「男性が女性役を演じている」という状況だったと思います。
今回の登場人物のうち、男性はたったの3人。つまりそれ以外はすべて女性で、そしてすべて男の役者さんが演じていたというのだから、それはそれはすごい空間でした。でもそれが違和感ではなくて、すんなりそれで世界が成り立っていて、もちろん役者さんたちの一挙一動や表情、演技がすばらしいのはもちろんのことなんですが、ああこれは柏さんの世界だからなのかなー。と思ったりもしました。
女性同士の男性批判の会話だったり、女性が男性を振るシーンだったり、そういうの、ほんとうの女の人が演じていたらもしかしたら押しつけがましすぎてしまうかもしれない場面だったのですが、でもそれをあくまで女性に見える「男性が演じている」ことに意味があったのかなと。まあ自分が女性だからかもしれませんが、ぜんぜん嫌味がなくて、むしろ応援したくなるきもちでいっぱいでした。ちょっとお話から離れて考えれば、女性のきもちを男性陣に語らせた、というのもおもしろかったなと。男性が女性を演じているというのが舞台ぽくて、でもみなさんほんとうにはまり役だったので舞台すぎなくてそれが自然でナチュラルで、ほんと、バランスのとれた空気を作っていました。そしてだからこそマイノリティの男性役を演じていた男性が目立っていたのもよかったです。みんなキャラが立っていた。


そして、台詞がいちいちあったかくて、ほわっと心を救ってくれるのがほんとうによかったです。決して押し付けるのではなく、ほわっとしてる台詞たち。
たとえば、「学生時代はよかったな。いまはいろいろあって大変で」と言う陽子に、マリカが「え?陽子いまいろいろあるの?マリカ学生だけどマリカもいろいろあるよ?」と返して「そうねえ、学生時代も、いろいろあったわねえ」と笑ったのがすごく好きでした。決して「今だってこんなにいいことあるじゃん!」と「いま」を強要するのではなく「でも昔だって忘れてるだけでいろいろあったよなあそういえば」って、自分で気づかせてあげるやさしさというか。マリカちゃんはそんなこと考えてないんでしょうが、それがまたほわっと陽子さんを救います。ぶっきらぼうなベルボーイさんも、ぶっきらぼうながらも相方ベルボーイさんを励ましたりして、その台詞一つ一つも、けっして押し付けるのではなくて、ぽん、とそこに置いておくような、拾ってそれをどう受け取るのかは相手次第、というか、そういう、優しいあたたかさのある言葉ばかりでした。「昔はよかったって言うけど、いまだって楽しい」なんて、ともすれば説教臭くなってしまう内容でしたが、説教してやろうなんてだれも考えてなくて、だれかがぽろりと零した言葉で誰かが救われて、前を向いて歩いていく、みたいな、そういうあったかい世界でした。さいごのベルボーイコンビの会話もすきでした。流れる米原さんのdarlingも最高でした。最後のシーン、ほんっとにすきです。ベルボーイがすき。


勝手な感想ですがキャストさんたちも楽しんでこの舞台をやってらした印象があって、それもすごくうれしかったです。毎日毎日進化していく内容も、日々尺が長くなっていく日替わりもぜんぶぜんぶみんなでがんばってくれてるんだなあってきもちになれて、舞台の内容同様ほんわかしました。そして何といっても極めつけは千秋楽のおまけパート。カーテンコールがあって暗転したあと、キャスト全員がそろっていて突然ミニショートコントが始まったのでした。あとから知ったのですがこれはキャストさんのひとり、梶原さんが主体で考えてくれたものだったそうで、みんなが楽しそうにワイワイとボケたりつっこんだりするのを見られたのはすごいしあわせでした。そういうふうに、キャストさんたちも作品を大事にして、愛していたんだなあってしあわせになれました。


2015年初観劇がこの作品でほんとうにしあわせな思いをさせていただきました。千秋楽のカテコでは「続編やりたいね~」なんて話していたので実現してくれるといいなあとおもってます。またいつか彼らに会いたいです。すっごくすてきな空間ですてきな時間を過ごせました。ありがとうございました。