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つれづれと

雑食おたくが綴る感想やら独り言やら写真やら。

【感想】いのうえ歌舞伎「蒼の乱」(2014.04.22)

感想

劇団☆新感線2014年春興行 いのうえ歌舞伎「蒼の乱」
3/27~4/26 東急シアターオーブ
5/8~27 梅田芸術劇場メインホール
出演:天海祐希松山ケンイチ早乙女太一
 梶原 善 森奈みはる 粟根まこと 高田聖子 橋本じゅん
 平 幹二朗 ほか


行ってまいりました。初めてのシアターオーブで、初めての新感線でした。新感線は母が好きでずっと追っかけているのでその影響でDVDで作品を見たり話を聞いたりということはあったのですが、自分の目で見るのは初めてで、そわっそわしながら行きました。オーブは二階三階がひどいって噂だけ聞いたことはあったのでそちらも気になってたので行けてよかったです。でも一階席だったのでけっきょくひどいのは体感できなかった…。さて、以下ネタバレご注意です。

 


蒼の乱とは、「いのうえ歌舞伎」作品として上演されたもの。このいのうえ歌舞伎がなにかっていうと

いのうえ歌舞伎シリーズ
神話や史実などをモチーフとし、ケレン味を効かせた時代活劇のシリーズ。近年では、その持ち味に加えドラマに重きをおき、人間の業を浮き彫りにした作品作りへ転化している。(公式サイトより引用)

と、いうことらしいです。歌舞伎って言ってるけれどまったく歌舞伎ではなくて、派手な立ち回りや音や照明の演出があるという舞台のことらしいです。ただ、歌舞伎っぽい音が使われていたりとかいうのはあるので、現代版歌舞伎?と表現すればいいのかなって感じがしました。冒頭にも言った通りわたしこれが初生新感線なものでまちがってたらすみません…たぶん検索かけたらわたしより詳しい人たくさんいるはずだ。
そのいのうえ歌舞伎を初めて体感して思ったのは、音と光っていうのは、作品にものっすごい影響を与えるんだな~ってことでした。まず曲がかっこいい。かっこいい曲が大音量でかかるのめっちゃかっこいい。そして照明がかっこいい。照明すげえええって何度も叫びそうになるのをこらえました。かっこいい。あの演出のかっこよさっていうのは、劇場で全身で体感してなんぼだなって噛みしめました。すっごいかっこよかったからかっこよかったしか言えない。


「蒼の乱」は平安時代のお話。贅沢にまみれて暮らす貴族たちと、その貴族たちに重い税をかけられて苦しむ民たち、そして国外からやってきた渡来衆のおはなし。タイトルの「蒼の乱」のとおり、民たちが貴族へ反乱を起こす話でした。その乱を起こす人、その乱に巻き込まれる人、それぞれがそれぞれの考えがあって目指すものがあって、そんな人々がかかわりあっていくお話、というかんじです。
主人公は蒼真。渡来衆の一族の長で、占いと弓を得意としているとにかくかっこいいひと。元ヤン。うそです。でも元ヤン感すごくあった。かっこよかった。かつて自分の国で反乱を起こしそのせいで結果として国を滅ぼしてしまったという過去を持つ女性でした。そしてもうひとりの主人公は将門小次郎。最強の武士で馬と会話ができる馬男。坂東(関東のこと)から京都へやってきた男で、まっすぐな性格。このふたりが運命の出会いをして、愛し合い、そして夫婦となり互いが互いを思いあい…となっていくのですが、そこでいろんなことが起こります。とにかくいろんなことがあります。


正直、正直なことを言うと、一度見ただけではわたしは「将門小次郎」を好きにはなれませんでした。好きになれないというか自分の理解の範疇を超えるキャラクターでした。京都で働いていて、自分の趣味で渡来衆を殺して楽しんでいた貴族に見かねて反旗を翻して蒼真を助けてくれたのはわかる、わかるけれどだったらもっと早く助けてあげて蒼真や桔梗以外のひとたちも救ってあげてほしかったと思ったし、海賊の純友に反乱を誘われて悩んでいた割には地元では簡単に戦いを引き起こすし、結局は常世王に説得されて反乱軍になっちゃうし、かとおもったらやっぱり常世王許せない~!俺朝廷につく~!って言い出すし、かとおもったら俺がまちがっていたやっぱり俺はこっち側に戻る~!とか言い出すし(だいぶ省略したしだいぶ偏見入ったまとめ方です)、って感じで、劇中で蒼真にも言われてましたが気持ちコロコロ変えすぎで、もしわたしがこの時代の農民だったらこんなすぐ意見を変えるトップにはついていきたくないなと思いました。でもそこが小次郎のいいところであり魅力であると言われたらそうなのかな~とは思います。まっすぐで、人を疑うことを知らないから、ついいろんな人の意見に流されてしまう。おまえの故郷のためだ、おまえの妻のためだと言われたらそれを信じてしまう。たしかにそういうまっすぐで不器用な男像というのが魅力的、という捉え方もできるんですがそれが自分ひとりの問題ならそういう生き方もいいよね、で済ませられるんですけどいかんせん彼の場合坂東とか蝦夷とか背負ってるんで…君だけの問題じゃないんだもっかいよく考えて…!って何度か肩を掴んで揺さぶりたくなりました。
でも小次郎は戦いだとかっこよくて、それから一度決めたらこれ!!!ってそれに対して迷わずまっすぐな姿勢だったのはかっこよかったとおもいます。だからさいごのシーンとかびりびりきました。かっこよかった。太刀をぶんぶん振り回すのも好きでした。力と勢いで押し切るイメージでした。


そしてそんな小次郎の妻となった蒼真。蒼真もさいしょのほうはよくわかんないキャラしてるなとか思っちゃって見ていたのですが二幕入ってからのブレなさに痺れました。今回この作品を見て改めて感じたのですがわたしは基本的にブレないひとが好きみたいです。蒼真は最初、助けてもらった小次郎に反乱なんてやめろと何度も説得をします。それは自分がかつて自国で反乱を起こしてしまいその結果として故郷を失ってしまったから。でも途中で小次郎の妻となり、それが小次郎の進むべき道なら全力でサポートする、と心に決める蒼真。このとき、そんなあっさり意見を変えちゃっていいのだろうかとちょっと思ったのですが、それって蒼真が過去を振り切ったわけではなく、むしろまだ自分の過去を引きずっていることには変わらなくて、過去を引きずって臆病になっている→過去を引きずって自分のできなかったことを小次郎にやってもらおうとしている、に変換されただけだったんだなと気づきました。だから違和感あったのかなと。しかしだんだんと小次郎がおかしくなっていくにつれ、蒼真はどんどん腹をくくっていきます。蒼真もまた小次郎といっしょで、とにかくまっすぐでそしてたぶん小次郎よりも頑固。だから小次郎が愛するものを守ろうとして、二幕では小次郎の不在を埋めるために「将門御前」として立ち上がる。その姿がとんでもなくかっこいい。自分の過去とかどうでもよくて、ただただ愛した男が愛したものを守るためだけに戦うという一本の筋を通そうとするその姿が、まっすぐで美しかったです。「将門御前」となった蒼真の衣装がとにかくかっこよくて、マントが風になびいてふわってなるのがかっこよすぎて、ああマントになりたい。いや風になりたい。風になってそのマントを揺らしたい。蒼真の殺陣はガンガンあるわけではありませんでしたが弓矢がずるかっこよかったです。あとお歌。小次郎がまわりの民衆が歌って王!親皇!って持ち上げられるのに対して、蒼真は自らマイクを持ち歌い上げるのがたぶん、このふたりの違いなんだろうなと思いました。


そして周りのキャラクターも魅力的でした。まずは帳の夜叉丸。もう、ドツボすぎて一幕と二幕の間ずっと「やしゃまるちゃん…(出会って数分で勝手にちゃん付けで呼ぶキモオタっぷりを全力で発揮)」と頭を抱える事態になりました。なんていうか、ずるすぎるお人でした。夜叉丸は大盗賊として登場します。どこからともなく現れてさっと小次郎や蒼真を助けてくれるというおいしすぎる役回りだったのですが、じつは蝦夷であるということが判明。蝦夷が自由に暮らせる世界を求めて朝廷をひっくり返そうと動いていたひとりでした。夜叉丸はとにかくかっこよくて、強くて、かっこいい。あっでもかわいい。そんなずるすぎる人で、どこらへんがかっこよいかというともう殺陣が見えない速さってのが痺れました。とにかく最強キャラって役回りだったので目にも留まらぬスピードでばったばったと敵を倒していくその姿がもうかっこよすぎて。しかもその動きが流れるように、きれいでうつくしくて、見とれてしまう刀捌きでした。あの刀になら斬られてもいい。後半手を縄で縛られてその縄使って戦う場面があるのですがそれもまたお美しかった…。そしてわたしは前述のとおりブレない人が好きなのですが、夜叉丸は最初から最後までブレなさすぎる強さがありました。この人についていくと決めたらどこまでもついていく。たとえその人が死んでも、自分の目の前で殺されたとしてもそれを貫き通す。最後、常世王の首を奪い返しに行ってそれを両手でしっかりと抱きしめていた夜叉丸を見てぼろぼろ泣けました。常世王のために、蝦夷のために、ってずっと尽くしてきたのに、その常世王を目の前で殺されて、でもその殺した人間の妻に協力もしてあげてっていう、どこまでも自分を殺して目的のためにただただ突き進むという姿が美しかったです。どこまでも美しかった。最後走り去っていく場面で拍手で送り出せたのがうれしかった。あの大きな舞台にひとりで立って叫ぶ夜叉丸の姿が忘れられません。しかしかわいいところはかわいくて、にゃんにゃん言ったりあっかんべーをしてみたり、はいはいかわいいかわいいって場面もたくさんあってたまらなかったです。衣装は一幕前半の盗賊衣装がひらふわってしてて好きです。夜叉丸のためにもう一回行きたいと本気で思ったくらいにはすきです。すき。


ほかにも桔梗、黒馬鬼。純友さん、常世王、邦香、淑人さんなどなど、魅力的なひとがたくさんいました。女の子で好きなのは断然邦香です。国司組が出てきた瞬間「あっわたしこのひとたちすきなやつだ…」って思ったんですがその中でも邦香は圧倒的にだいすきでした。死んでからまさかのカムバックでやったー!やったー!ってなりました。幽霊になってからの潔さがすきすぎる。かっこいい。常世王や純友さんも小次郎から悪役呼ばわりされてましたが彼らには彼らの信念がありそれを目指して全力で生きていただけであって、むしろわたしはこのひとたちを嫌いになることはできないなと思いました。特に常世王は蝦夷の王をやっているのに出身は貴族だということが最後判明しそれを小次郎に責められるのですが、それこそ差別だと、わたしはそう感じました。女も男も貴族も蝦夷も渡来衆も関係ないみんなが自分として生きられる国に出生なんて関係ないし、夜叉丸もそんなことは構わないと言っていたし、大事なのはどう生まれたかではなくどう生きるのかなんじゃないかなーと。これどっかの漫画とかで読んだことある台詞なきがする。常世王の場合は兄への復讐と言う私情が入っていましたが、たとえそうだとしても、とわたしは感じました。淑人さんはさいごまでつかめないお人でしたが、最後の最後で小次郎の遺志をしっかりと守ろうとしてくれた姿勢にああこのひともまた闘っているのだなと熱くなりました。最後のシーンの台詞が変更されたと聞いたのですが、わたしは変更後の台詞のがすきです。理想論だけれど淑人さんにはちゃんと約束を守ってほしいなと。黒馬鬼はもう、ずるいですねー!ずるい!ずるいわ!すみっこでなんかおもしろいことしてるのずるいわ!見ちゃうわ!


作品の中にたくさん戦いがあって、たくさん殺陣があって、そしてたくさんの場面展開があって、とにもかくにもそのセットと、音と、照明の織りなす世界の広さに圧倒され続けました。最後の最後のシーンで、小次郎が愛した坂東の草の海と空を蒼真が語るのですが、そこで広がる青い青い空と風に揺れる緑の大地が、圧巻でした。あんなにはっきりと舞台上に大地を見たのは初めてかもしれません。坂東のどこまでも広がる平野に埋もれるようにして立ち愛した男を感じる蒼真が美しくて、風に揺れる草が美しくて、青い青い空が美しくて、あれはすごいと思いました。文字じゃ全然伝わらないし、あれは伝わらなくていい…。きっとDVDで見てもたぶん違うんだとおもいます。あれは劇場で見て、感じるから、坂東が見えたんだなって。あれだけ何度も何度も小次郎が言っていただいすきな故郷を最後の最後に会場が全員で共有するっていうそのことで胸が震えました。最高のラストシーンでした。


かっこいいキャラクターの生き様と、かっこいい殺陣、かっこいい演出。かっこいいとはこういうことかと、身に染みる3時間40分でした。こんな長い舞台を見たのも、ああいう大きい劇場で舞台を見たのも久しぶりで身が引き締まる感じしました。行ってよかった。たくさんのプロの技を見せつけられた感じがしました。あとアドリブやら小ネタやらもちょいちょいあってずっとシリアスシリアスってわけじゃないのも魅力的だなと思いました。ピンポーンってSEほんと不意打ちで笑った。アドリブで夜叉丸がモノマネ始めたときは大丈夫かこの子と思いながら笑いました。帳の夜叉丸氏のスピンオフが上演されるならいつでも駆けつけるのでよろしくおねがいいたします。そして新感線、たぶんこれはまた足を運ぶパターンのやつです。次もたのしみにしております。